動脈硬化の原因は何か【永井俊哉ニューズレター】
動脈硬化は、脂質の取り過ぎが原因とかつては考えられていました。飽和脂肪酸やコレステロールの多い食品を摂取すると、血液中のコレステロールが増えて、ちょうど排水管の壁にヌメリやヘドロが付着すると排水管が詰まりやすくなるのと同じように、血管内膜にコレステロールが付着して、血管が詰まりやすくなると思っている人は、今でも多いことでしょう。しかし、コレステロールは、理由もなく血管内膜に沈着しません。このプレゼンテーションでは、動脈硬化の根本的な原因を探り当てることで、動脈硬化の根本的な予防策を考えます。
この動画は、Laniでの連載「健康とアンチエイジング」の「動脈硬化の原因は何か」を要約して解説したものです。テキストによる詳細は、リンク先を参照してください。
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第一章 動脈硬化の従来の定説を疑う
動脈硬化とは、動脈の血管が硬くなることです。動脈硬化にはいくつかの種類がありますが、一般的なのは、アテローム性動脈硬化です。動脈の内膜にコレステロールが蓄積し、マクロファージが酸化されたコレステロールを貪食して泡沫細胞化し、プラークが形成されます。それが破裂して血栓が詰まるなど命にかかわる症状に発展します。こうしたアテローム性動脈硬化の原因を説明する理論として、長らく支配的であったのがアンセル・キースの説です。キースは、血液中のコレステロールに原因を求め、キース方程式と呼ばれる血清コレステロール濃度を決める式を提唱しました。このキース方程式を定性的に説明するなら、血清コレステロール濃度は、飽和脂肪酸の摂取とコレステロールの摂取によって増え、多価不飽和脂肪酸の摂取で減るということです。キースは、この方程式に基づいた食事指導を推奨しましたが、本当に血清コレステロール濃度が上昇すれば、循環器疾患のリスクも高まるのでしょうか。3万人以上の米国成人のデータを解析した研究によると、血清での総コレステロール濃度と心血管死亡率の関係は、U字型の曲線となります。灰色のゾーンは、95%信用区間です。心血管死亡率は、かつて検査で採用されていた基準値以上でも有意に1を超えておらず、キース説は成り立っていません。総コレステロールはあてにならない指標という認識が広まった結果、現在では、HDLコレステロールの下限とLDLコレステロールの上限に基準を設けるようになりました。HDLとLDLの違いを説明しましょう。HDL、高密度リポタンパク質が、コレステロールを回収するがゆえに善玉コレステロールと呼ばれ、下限値が設定されているのに対して、LDL、低密度リポタンパク質は、コレステロールをもたらすことから悪玉コレステロールと呼ばれ、上限値が設定されています。キース説の支持者たちは、現在では、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取がLDLコレステロールを増やし、アテローム性動脈硬化をもたらすというように見解を変えています。この修正版キース説が正しいかどうかを次の二つの章で検討しましょう。
第二章 飽和脂肪酸摂取が原因なのか
飽和脂肪酸の摂取は、血清コレステロールの組成にどのような影響を与えるかを検証した2019年発表の米国での研究成果を紹介しましょう。この研究によると、飽和脂肪酸の高摂取群は低摂取群と比べ、LDLが有意に高かったのですが、それは大型のLDLの増加によるもので、小型のLDLに有意差はありませんでした。LDLが大型なのか小型なのかは、動脈硬化のリスクを考える上で重要な違いです。LDLには、大型のラージ・ブイアントLDLと小型のスモール・デンスLDLの二種類があり、血管内皮下に侵入して動脈硬化を惹き起こしやすいのは、小型高密度のsdLDLです。そのため、sdLDLコレステロールは、超悪玉コレステロールと呼ばれています。飽和脂肪酸の摂取がsdLDLコレステロールを増やさないのなら、何が増やすのでしょうか。2015年発表の研究によると、メタボリック・シンドローム関連の変量の中で最もsdLDLコレステロール濃度の上昇に寄与していたのは、中性脂肪の異常でした。つまり、飽和脂肪酸よりも糖質の過剰摂取によって起きる中性脂肪の増加が、sdLDLコレステロール濃度を上昇させ、動脈硬化を惹き起こしているということです。sdLDLがアテローム性動脈硬化を惹き起こす機序を説明しましょう。中性脂肪が過剰だと、sdLDLは、血管内皮下に侵入します。活性酸素によって酸化されると、異物として認識され、白血球の単球から分化したマクロファージに貪食されます。マクロファージが泡沫細胞となって蓄積することで、血管内にプラークが形成され、アテローム性動脈硬化になるというわけです。
第三章 コレステロール摂取が原因か
キース方程式は、飽和脂肪酸の摂取に加え、コレステロールの摂取も血清コレステロールの濃度上昇要因としています。しかし、食事由来のコレステロールを減らしても、肝臓が糖や脂肪を合成してコレステロールを作るので、血清コレステロールが減る必然性はありません。食事でのコレステロール摂取と血清コレステロール濃度との間に明らかな関連を示すエビデンスがないことから、厚生労働省は、2015年に、コレステロール摂取の目標量の上限を撤廃しました。コレステロールを含む代表的食品は、卵です。厚生労働省の上限撤廃を承けて、「卵は一日一個」はもう古いと言われるようになりました。しかし、卵のコレステロールが無害だからといって、卵をいくら食べてもかまわないと結論付けるのは、論理の飛躍です。なぜなら、鶏卵の卵黄に多く含まれるオメガ6の不飽和脂肪酸、アラキドン酸は、炎症を促進するからです。卵の摂取が健康に与える影響を調べたメタアナリシスによると、卵の摂取量と死亡率の関係は、このような結果となりました。左の心血管疾患発症率も、右の全原因死亡率も、基準としている週に4個のハザード比が最も低く、全く食べない場合と週に10個以上食べる場合は、ハザード比が有意に1を超えることがわかりました。「卵は一日一個」どころか「卵は二日に一個」にした方がよいということです。そもそも鶏卵の卵黄は、胚がヒヨコになるための栄養です。胚は、一方でヒヨコへと急成長しなければならないと同時に、他方で感染症とも戦わなければいけません。成長促進カスケードを活性化し、免疫機能を強化するアラキドン酸が卵黄に含まれていることは理にかなっています。しかし、成長が止まって衛生的な環境に住む人間の成人が、抗老化カスケードを促進しようとするなら、卵の摂取は抑制すべきです。
第四章 悪玉コレステロールは悪玉か
コレステロールは、細胞膜、ホルモン、胆汁酸を作るために必要な材料であって、本来は有害物質でありません。LDLコレステロールも、悪玉コレステロールという不名誉な呼称とは裏腹に、健康を維持する上で重要な役割を果たしています。すなわち、血管に炎症が生じると、LDLは、炎症による損傷を修復するために、肝臓で作られるコレステロールを運んできてくれます。修復が終わると、HDLが余分なコレステロールを回収して、肝臓に戻すのですが、肝臓に行くまでもなく、途中でLDLに転送することがあります。その転送をこの図で説明しましょう。左上のVLDL、超低密度リポタンパク質は、肝臓で合成され、抹消に中性脂肪やコレステロール・エステルを運搬する途中で、リポタンパク質リパーゼの作用を受けて、中性脂肪の一部を失い、中間密度リポタンパク質、IDLとなります。HDLは、コレステロール・エステル転送タンパク質、CETPを媒介として、VLDLやIDLとの間でコレステロール・エステルと中性脂肪を交換します。そして、肝性リパーゼの働きにより、IDLは中性脂肪を失って、LDL、さらには、sdLDLといったコレステロール・エステルの占める割合が大きいリポタンパク質へと代謝が進みます。CETPは、遺伝的もしくは後天的な因子により、欠損することがあります。CETP欠損症では、HDLがコレステロール・エステルをLDLに転送できなくなり、結果として、HDLコレステロールが増え、LDLコレステロールが減ります。善玉コレステロールが増え、悪玉コレステロールが減ることは、動脈硬化を改善する上で良いことのように思えますが、実際には動脈硬化を逆に悪化させます。それにもかかわらず、ファイザー、ロシュ、イーライリリー、メルクといった製薬大手が、CTEP阻害剤を脂質異常症治療薬にしようと試みました。CTEP阻害剤の投与により、HDLが増え、LDLが減ったものの、死亡率の改善に失敗したため、開発中止となりました。なぜ四社とも失敗したかといえば、それは、コレステロールは有害なので、それを増やすLDLは悪玉、減らすHDLは善玉という考えが根本的に間違っているからです。LDLコレステロールは、譬えるなら、救急車のようなものです。患者が発生すると、救急車が駆けつけるように、LDLコレステロールは、炎症による血管内膜の損傷があると、sdLDLコレステロールとなって、損傷を修復します。救急車がサイレンを鳴らして出動する事態は、病人あるいは怪我人が出たということですから、悪いことと言えるでしょうが、だからと言って、救急車を悪玉車、救急搬送中の救急車を超悪玉車と呼ぶというのはいかがなものでしょうか。実は、LDLコレステロールを悪玉コレステロール、sdLDLコレステロールを超悪玉コレステロールと呼ぶのも同じぐらい不当な呼称なのです。救急車も、LDLコレステロールも、どちらもそれ自体は悪ではありません。治療が終わって、患者が帰宅するときには、タクシーを利用するとしましょう。退院できるほどに回復したことは良いことですが、だからといって、タクシーを善玉車と呼ぶのはいかがなものでしょうか。HDLコレステロールを善玉コレステロールと呼ぶことも、同じく、ミスリーディングです。もとより、LDLコレステロールとHDLコレステロールとの相対比を計測することは、動脈硬化のリスクを調べるのに役立ちます。同様に、もしも救急車の出動が減って、退院者のタクシー利用が増えるのなら、それは入院患者が減っているということですから、良いことと言えますが、あくまでも結果としての話でして、「救急車は悪玉車だから、予算を削減して数を減らせ」とか「タクシーは善玉車だから、補助金を支給して数を増やせ」とかいった政策を実行しても、地域医療が改善することはありません。それどころか、入院できずに命を落とす人が増えるので、むしろ悪化するでしょう。救急車の台数を減らす前に病人や怪我人を減らさなければなりません。それと同じように、LDLコレステロールを減らす前に血管の炎症を防がなければなりません。現在、高LDLコレステロール血症治療の第一選択薬はスタチンですが、スタチン投与が死亡率を低下させるのは、スタチンに抗炎症作用があるからで、たんにLDLコレステロールを減らすからだけではありません。
第五章 炎症と酸化はなぜ起きるのか
アテローム性動脈硬化の原因は、コレステロールではなくて、炎症と酸化というのが前章の結論です。そして、炎症と酸化の目的は、免疫による生体保護です。生体保護と言っても、免疫は諸刃の剣で、過剰な免疫反応によってアテローム性動脈硬化のような副作用が生じることがあります。活性酸素による酸化が免疫反応であることは、前々回に述べたので、ここでは炎症を取り上げましょう。炎症は、軍事用語を用いるなら、焦土作戦に相当する免疫反応です。焦土作戦とは、侵入して来た敵が兵站面で消耗するように、食料やインフラなど敵が利用しうる資源を焼き尽くす戦術です。焦土作戦は、侵入者を撃退するのに有効ですが、同時に自国にも大きな損傷を与えてしまいます。炎症についても同じことが当てはまります。血管の炎症と酸化が本来の目的を果たす場合があります。例えば、菌血症のように、傷口から細菌が血管内に侵入してくる場合です。菌血症で多いのが、虫歯菌や歯周病菌によって惹き起こされる歯原性菌血症です。虫歯は主として子供が罹患する病気であるのに対して、40歳以上で増えるのが歯周病です。歯周病とは、歯周ポケットにプラークとなって付着する歯周病菌が引き金となって、歯肉に炎症が起き、歯を支える歯槽骨が溶けて、歯が抜けやすくなる病気です。しかし、歯周病は、たんに歯が抜けやすくなるだけの病気ではありません。歯周病菌が、歯周病部位の血管から循環器系を通じて全身へ拡散することがあります。この場合、血管に炎症が生じます。歯周病菌の血管への侵入が炎症を惹き起こしているとするなら、歯周病の治療は動脈硬化症の改善につながるのでしょうか。ニューヨークで420名を中央値3年間追跡した調査の結果を見ましょう。このグラフの縦軸は、頸動脈エコーで計測した総頸動脈における中膜内膜複合体がどれだけ厚くなったかを横軸は、歯周ポケットが深い歯がその状態をどう変化させたかを示しています。右に行くほど、つまり、歯周病の状態が改善するほど、厚さの変化が小さくなる、つまりアテローム性動脈硬化の進行が遅くなることがわかります。このグラフの縦軸は同じですが、横軸は、歯周病菌の割合が3年間でどれだけ減ったかを示しています。右に行くほど、つまり、歯周病菌の割合が減るにつれて、厚さの変化が小さくなっています。この結果から、歯周病の治療は動脈硬化症の改善につながると言えそうです。
第六章 予防的免疫を防止する方法
炎症や酸化といった免疫反応は、血管内に細菌やウイルスなどの寄生者が侵入した時だけでなく、寄生者がまだ侵入していないのにもかかわらず、それを予想して、炎症や酸化で侵入に備えることがあります。それは、栄養が豊富にある環境下で起きるエピジェネティックな変化です。私はその一連の変化を成長促進カスケードと名付けました。栄養が豊富な環境下では、宿主の数の増加に伴って、寄生者の数も増え、両者の間で激しい攻防戦が繰り広げられるのが、生物界の常です。それゆえ、幅広い種において、カロリー過剰な食事が成長促進カスケードを活性化するようになっているのです。このエピジェネティックな遺伝子発現のモードは、戦争モードと言ってよいでしょう。個体の成長と生殖を促進し、炎症や酸化といった自分自身にもダメージを与える攻撃を続けるならば、個体の寿命は短くなります。個体の大量生産=大量破棄は、個体の利益にはなりませんが、寄生者の攻撃から種を守るのには役立ちます。反対に、栄養が乏しくなると、宿主の数は減り、寄生者も減って、攻防戦が沈静化します。カロリー制限をすると、抗老化カスケードが促進される所以です。このエピジェネティックな遺伝子発現のモードは、平和モードと言ってよいでしょう。個体の成長と生殖は延期され、炎症や酸化が抑制されます。個体は長生きとなりますが、寄生者の攻撃が緩慢なら種の存続は守られます。こうした遺伝子発現のスイッチの切り替えは、過去の人類を含めた多くの生物種にとって有益であったのでしょうが、食料がいくらでも手に入る一方で、寄生者にあまり悩まされない衛生的な環境下で生きる現代の先進国の住民にとっては不都合です。生命史上最近になって登場したあまりにも特殊な環境であるため、私たちの遺伝子もまだ適応できていないのです。遺伝子発現のメカニズム自体を変えられない以上、対策としては、カロリー制限やカロリー制限模倣物質の摂取で成長促進カスケードを抑制し、動脈硬化を予防しなければなりません。そのための方法は、このシリーズで既に提案済みなので、次の章では、歯周病や虫歯を効果的に予防するための方法を動脈硬化防止策として提案します。
第七章 歯の健康を守るための方法
日本人の95%は毎日歯を磨いています。それにもかかわらず、多くの人が虫歯や歯周病を患っています。理由として、日本人の歯磨き方法の問題点をいくつか列挙できます。すなわち、食後にすぐ歯を磨く。歯ブラシしか使わない。定期的なPMTCを受けないといった問題です。これらの問題の解決策を提案しましょう。多くの日本人は、毎食後すぐに歯を磨く習慣を身に着けています。しかし、食後の口腔内は酸性に傾いていて、pH5.5を下回ると、エナメル質が溶け出してしまいます。そういう状態で歯を磨くと、エナメル質どころか、その内側の象牙質までが傷付く可能性があります。対策として、唾液で中和させるという方法がありますが、私は、もっと手っ取り早い方法として、重曹うがいを推奨します。重曹うがいは簡単にできます。コップ1杯の水道水に、重曹をスプーン1杯程度溶かして、それでうがいすればよいだけです。重曹、すなわち炭酸水素ナトリウムの水溶液は、弱アルカリ性なので、食後にこれでうがいすれば、口腔内が急速に中和されます。重曹は、料理にも使われるぐらいなので、誤って飲み込んでも、胃の中で水と塩化ナトリウムと二酸化炭素に分解されるだけで、無害です。ただし、塩分を控えるという観点からはできるだけ回避した方が賢明です。重曹は、掃除にも使われるぐらいなので、たんに中和するだけでなく、口腔内を掃除する効果もあります。歯のホワイトニングや口臭予防の効果も期待できます。重曹うがいはとりわけ虫歯予防になります。その理由を説明しましょう。虫歯菌は、好気性菌で、歯の表面に付着しています。酸で歯を溶かすので、酸性環境を好みます。それゆえ、重曹うがいは虫歯菌を死滅させるのです。これに対して、歯周病菌は、嫌気性菌で、酸素が届きにくい歯と歯茎の間に生息しています。塩基性の環境を好むので、重曹うがいでは死滅しません。歯と歯茎の間に潜む歯周病菌を、歯ブラシを使って物理的に取り除こうとすると、歯肉を傷つけることになりかねません。そこでおすすめなのが、口腔洗浄器を用いた歯周の殺菌です。口腔洗浄器のタンク内の水に消毒液を注入し、歯と歯茎の間を狙って高圧水を噴射すれば、隙間に潜む歯周病菌を死滅させやすいので、歯周病対策として有効です。歯科医が利用する殺菌用の洗口剤としては、次亜塩素酸とグルコン酸クロルヘキシジンが代表的ですが、どちらを使うとよいでしょうか。2018年発表の二重盲検ランダム化比較試験によると、30秒後の唾液における細菌数の減少率は、次亜塩素酸が33%であるのに対して、グルコン酸クロルヘキシジンは58%です。次亜塩素酸の群では、1時間後に細菌数のプラセボ対照群との有意差を失ったのに対して、グルコン酸クロルヘキシジンの群では、5時間後までプラセボ対照群と有意差を維持しました。よって、グルコン酸クロルヘキシジンの方が次亜塩素酸と比べて効果と持続性で勝ります。もっとも、グルコン酸クロルヘキシジンにも大きな問題があるのですが、それについては後でまた取り上げます。口腔洗浄器を用いたグルコン酸クロルヘキシジンによる殺菌が歯周病対策としてより有効であることは、30年以上前から知られています。1990年に発表された試験の結果を紹介しましょう。この研究では、グルコン酸クロルヘキシジンを使う群と使わない群、口腔洗浄器を使う群と使わない群、都合四つの群に222名の歯周病患者を割り当て、6か月後に歯周病治療の効果を測定しました。歯肉炎症の程度を示す歯肉炎指数は、3群とも基準となる対照群と比べて、有意に減少しました。歯周ポケット測定時の出血は、3群とも基準となる対照群と比べて、さらには、グルコン酸クロルヘキシジンで口腔洗浄器を使う群がどちらかを使わない群と比べて有意に減少しました。プラークが付着する度合いを表すプラーク指数は、グルコン酸クロルヘキシジンを使う群が、使わない群に比べて有意に減少していました。以上から、口腔水流洗浄器を用いてグルコン酸クロルヘキシジンで歯周ポケットを殺菌する方法は、歯周病治療に有効であると言えそうです。グルコン酸クロルヘキシジンは、歯周病予防に効果的ですが、副作用もあります。グルコン酸クロルヘキシジンは、バイオフィルムによるカルシウムの取り込みを助長し、歯石形成を促します。また、飲食物由来の色素を歯に沈着させやすいという副作用もあります。これらの弊害を取り除くためにも、定期的に歯科医で歯石除去や歯面清掃などのPMTCを受ける必要があります。歯の健康を維持することは、動脈硬化の予防のみならず、体全体の健康の維持に必要なので、そのための努力を惜しむべきではありません。