Xの改悪に備えてスレッズを始めました【永井俊哉ニューズレター】
2023年9月18日に、X(Twitter)のオーナーであるイーロン・マスクは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との対談中に、ヘイトスピーチや偽情報を拡散させるボットを封じ込めるべく少額の月額課金を導入するつもりだと述べました。
2023年3月27日のツイートでも、マスクは「有料認証はボットのコストを1万%まで増加させ、電話やCCクラスタリングによるボットの特定をはるかに容易にする」ことを理由に「有料アカウントのソーシャル・メディアは、唯一の重要なソーシャル・メディアになるだろう」と言っていたので、これは彼の持論のようです。
メディアは「Xシステムの利用に毎月少額を課金する方向に移行中である最も重要な理由は、それが膨大なボット軍団に対抗する唯一の方法であるからだ」というマスクの発言を取り上げ、全員に課金すると報道しましたが、実際のところ、マスクは、無料ユーザーを完全に排除するのではなく、たんに現行の有料サブスクリプション(X Premium)のプランとは別に、もっと安いプランを新設するだけのようです。
それでも、無料でできることは今よりももっと制限される(さもなくば、誰もそのプランを買わない)でしょうから、無料ユーザーにとってXはますます不便になりそうです。
マスクは、ツイッターの無料利用の制限を、買収したころから構想していたようです。ツイッター買収の翌月、2022年11月に報道された内部からのリークによると、毎月の閲覧時間に上限を設け、制限を超えると課金するというアイデアが検討されたとのことです。
このアイデアは、その後形を変えて、実行されました。2023年7月1日から、「極端なレベルのデータ・スクレイピングとシステム操作に対処するため」、一日の閲覧が、認証アカウントで6000投稿、未認証アカウントで600投稿までに制限されたのです。600投稿以上を読もうとすると、有料サブスクリプション(Twitter Blue)を購入して、認証されなければいけないので、有料サブスクリプションの販促とも受け取れます。
なお、マスクが謂う所のデータ・スクレイピングとは、機械学習で必要になるデータを収集するために、ボットがウェブからデータを抽出することを意味します。マスクは、Xのデータを使って、「宇宙の真実を解き明かす」ことを目標とする汎用AIを開発しようとしているので、ライバルの機械学習のためにXのデータが無料で使われることを嫌ったのでしょう。
その後、マスクはXの閲覧制限を緩和しましたが、ユーザーの不満は一挙に高まりました。このタイミングを狙って、マーク・ザッカーバーグが予定前倒しで7月6日にリリースしたのが、スレッズ(Threads)というツイッター競合アプリです。月間アクティブユーザー数が十億人のインスタグラムから容易に登録できることもあって、公開からわずか5日間で、ユーザー数が1億人を超えました。
しかし、この開発途上のアプリは、ツイッターと比べて機能が不十分であったため、多くのユーザーは幻滅し、離れていきました。8月になると、アクティブ・ユーザーは約8割減ってしまいました。マスクが9月になって課金ベースの拡大を発表したのは、スレッズの失速を見て安心したからなのかもしれません。
それでも、スレッズは、8月25日にブラウザ版を公開するなど、機能改善を続けています。Xが無料利用に大きな制限を課す一方で、スレッズが、今よりも改善されたサービスを無料で提供するようになるなら、形勢が逆転するかもしれません。
ただし、政治や重大ニュースなど、ネガティブな感情を惹き起こす投稿を歓迎しないというスレッズの方針は、スポンサーの要望に基づいているので、今後とも変わることはないでしょうから、そうした類の投稿がお目当ての人は、料金を支払ってでもXに留まることでしょう。
どちらが勝つのか、あるいは棲み分けるのかは、現時点では予測できませんが、Xだけに依存するのはリスクが高いので、保険をかけるつもりで、スレッズも始めることにしました。どちらでも同じような内容を投稿するので、Xの現状に閉口しているフォロワーの皆様には、スレッズでフォローしていただければと思います。登録は、以下のリンク
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インスタグラムおよびスレッズでのユーザーネームは、"ja.nagaitoshiya"です。スレッズで"nagaitoshiya"あるいは"永井俊哉"で検索していただければ、最上位に出てきます。